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『Re:ゼロから始める異世界生活 1』(長月達平)

通称リゼロ。

異世界転生もので、タイムリープものである。構図だけを見れば、RPGのメタファーなわけだが、そういう作品ではない。主人公は、メタな視点を持ちながらも、「こちらの世界」で必死に生きようとする。つまり、簡単には死を選ばない。その点が、『All You Need Is Kill』との違いでもあろう。

異世界に転生してはいるが、主人公スバルはチートな能力も現代テクノロジーの恩恵にも(ほとんど)あずかってはいない。機転やずる賢さは発揮するものの、活躍するのはだいたい周りにいる人間である。それが一巻のスバルの立ち位置だ。そこにカタルシスがあるのかと言えば、「ある」と答えるしかない。ただ、すでにアニメ版(その1その2)を観てしまっているので、1巻だけのストーリーとして評価するのは難しい部分はある。先を知ってしまっているがゆえに、というのがあるわけだ。ともあれ、ストーリーとして破綻はなく、次巻以降の含みもきちんと機能している。

本作を読んでいても思うのだが、「異世界転生もの」というテンプレートであっても、結局は料理次第なのだな、ということである。そんなことを言えば、世界中の英雄譚は、神話というテンプレートをうまく調理しているに過ぎない。現代では、それがゲーム的、ファンタジー的な「お約束」にすり替わっているだけだ。

後はもう、読んで面白いかどうか、引き込まれるかどうかだけ、といういっそシンプルな原則に落ち着く。いつだってそれが小説の土俵でもある。けちな批判はおよびではない。

Re:ゼロから始める異世界生活 1Re:ゼロから始める異世界生活 (MF文庫J)
長月達平 イラスト:大塚真一郎 [KADOKAWA / メディアファクトリー 2014]

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