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『ロイスと歌うパン種』(ロビン・スローン)

『ペナンブラ氏の24時間書店』でズギューンと心打ち抜いてくれたロビン・スローンによるパン作りのお話。

『ペナンブラ氏の24時間書店』は、古めかしい(いっそ呪術的な)書籍と最新のIT技術の対立と、そこからの弁証法的未来の提示が一つのテーマであったように思う。古いものでも、新しいものでも、それは技術であり、人間から見れば途方のない力を秘めている。古いからと言って見下すのも、新しいからと言って忌避するのもどうにも違う。力には、敬意と畏怖をちょうど良いバランスを持って接するのがいいだろう。

本書でも似たような構図が示される。手ごねのパンと、ロボットアームがこねたパン。しかし、そのパンを生み出す種は「秘伝」のスターター。なんだかよくわからないが、美味しいパンができるスターター。しかし、そこにも遺伝子工学のメスが入る。はたして、ロイスが作るパンの行方は……。

新旧さまざまが入り乱れるにせよ、本書は徹頭徹尾「技術と人間」の話である。私たちが何かを生み出す、その意味が問いかけられている。

ロイスと歌うパン種
ロビン・スローン 翻訳:島村浩子 [東京創元社 2019]

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