このタイトルで、IT系の話だとは意表を突きすぎである。途中でGoogleが登場してきてびっくりしてしまった。でも、もちろん書店と本の話でもある。つまり、古い本の話と、新しいITの話がまだら模様のように交じり合っているわけだ。
でもって両者は、結局のところテクノロジーの話でもある。グーテンベルグが世に放った種子も、その当時は新しい技術へと接続していたのだから。そう考えると、私たちは根本的な部分では何も変わっていないのかもしれない。そういう風なことをついつい考えてしまう。
時間層の異なる二つのテクノロジーが入り混じるストーリーを生み出す著者の眼差しは、どこか『ぼくらの時代の本』のクレイグ・モドも彷彿とさせる。どちらか一方を原理主義的に信奉するのではなく、その両方に好奇心を持った眼差しを向けるのだ。おそらくその眼差しこそが、現代を楽しむためには必要なものでもあろう。
とにかくまあ、楽しい本である。今このブログでこの記事を読んでいる人は、本を好みながらもITを嫌ってはないだろう。そういう人ならば、必ずどこかにワクワクする要素が見つけられるストーリーである。推理的要素で楽しむ作品ではないが、一応ミステリーな要素もあって、単調にはなっていない。登場人物もたいへん魅力的だ。
ITに詳しい人よりも、むしろ少しだけ知っているくらいの人の方が楽しめる本かもしれない。
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