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映画『リズと青い鳥』

位置づけ的には『響け!ユーフォニアム』のスピンオフ作品である。しかし、その面影は極めて薄い。

登場人物は同一だが、スポットライトは鎧塚みぞれと傘木希美にしか当たっておらず、その他のキャラは完全に背景化されている。せいぜい剣崎理梨々花が脇役的位置づけだが、それでもその範疇を出てはいない。

舞台も基本的には学校オンリーだ。部室とその周辺。おどろくほど起伏は小さい。『響け!ユーフォニアム』にあった、「いろいろあったけど、部活は楽しいです」というような青春ストーリーっぽさはまるで漂白されている。

では本作は退屈なのかというと、もちろんそんなことはまったくない。ダイレクトに感情を揺さぶるのではなく、雨と共に床下の浸水が進んでくるように私たちの心に情景を描き出す。

淡々と積み上げられる一人称。そして交差する童話の中の世界。物語は静かに、でも確実に進行していく。変わらない何かと、変わらないではいられない何か。二人の関係が微妙に揺らいでいく。

みぞれは多くを語らない。前半の大半は希美がしゃべっているだけだ。しかし、その分、みぞれは内的な世界が豊かなのである。本作の現実と童話の対比はその表現なのであろう。彼女はもう一つの世界を描くことができる。それが彼女の音楽的表現を支えていることは間違いない。

短絡的に見れば、希美は軽薄だし、みぞれは融通が効かない。しかし、それがどうしたというのであろうか。本作には勧善懲悪などどこにもない。誰かが誰かにとっての鳥籠であり、また青い鳥なのである。それはある種の優しさでもあり、残酷さでもある。

▼公式サイト:

『リズと青い鳥』公式サイト

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映画『リズと青い鳥』オリジナルサウンドトラック「girls,dance,staircase」
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