『独学大全』は、「こうすれば、(必ず)うまくいきます」というメッセージを含んでいない希有なビジネス書である。
人間の不完全性を考えれば、至極当然のようにも思えるが、世の中の本はそうなってはいない。で、そういう本を読んだ直後は完全感に包まれて士気は高まるのだが、その士気には継続性がなく挫折が待っている。なにせ「うまくいく」ことが前提なので、「うまくいかなかったとき」のことがケアされていない。つまり、わずかでもうまくいかないことが起こると詰みである。
たとえるなら、コピペだけでしかできなプログラマーのようなものだ。そのコードを少し書き換えたらエラーが出てしまう。で、エラーコードへの対処の仕方を習っていないから、対処ができない、結局、そのままのコードでやるしかないが、提案者と実行者の置かれた環境が異なるので、いずれうまくいかないタイミングがやってくる。
そういうノウハウ書は、やっぱり役に立つとは言い難いであろう。
人は計画を立てるが、その通りにはできない。人は何かを目標に掲げるが、やっぱりその通りにはいかない。
それを当たり前だと捉えること。人間のごくごく平均的な結果だと受け入れること。そして、そこから踏み出せる一歩を考えること。これが、理想化された人間を脱却したノウハウ書のあり方であろう。
人間は不完全であり、しかし変化しうるものだ。そして、人それぞれに異なっている。
これらの点を踏まえて、ノウハウ書は語ってもらいたい。もう、学校教育のように画一性を押し付け、その通りにしなければいけない、という呪いをかけるのは止めて欲しい。切にそう願う。