副題には「支持され、愛され、長く売れ続けるために」とある。コモディティ競争から抜け出すためには必須の考え方だろう。非常に現代的なマーケティング、プロモーションに関する書籍で、ユーザーをなめている担当者は一読したほうがよさそうだ。
ファンベースとは
ファベーストは何か? もちろん、ファンを重視する、というよりもそれを「ベース」にする考え方である。ベースとは、ベースキャンプ(基地)とかベースアップ(基本給部分に対しての昇給額)という言葉からわかるように、何かの土台になるものを意味する。つまり、ファンをベースにする考え方がファンベースである。
ファンベースとは、ファンを大切にし、ファンをベースにして(ベースには、土台、支持母体などの意味がある)、中長期的に売上や価値を上げていく考え方だ。
では、ファンとはなんだろうか。本書によれば「企業やブランド、商品が大切にしている『価値』を支持している人」を指す。重要な指摘だ。その重要さは後から確認するとして、ファンベースとは、新規顧客の獲得に躍起になるのではなく、既存のお客さん、特に熱狂的に自社製品を愛してくれる人を大切にしよう、という考え方である。
釣った魚に餌を与えないのではなくむしろばんばん餌を与えて、「ほらほら、ここいいでしょ」と自信を持って勧めてもらえるようなブランドを築き上げることが目標と言えるだろう。
言い換えれば、企業/消費者という二項対立で捉えるのではなく、熱狂的なファンを内側に取り込んで、つまりありきたりな二項対立の構図を崩す形でマーケティング施策を考えていくのがファンベースである。
とは言え、そうした目的先行で捉えてしまうと、結局はうまくいかない。なぜなら、大きなものが欠落しているからだ。それは、先ほどのファンの定義とも重なってくる。
ファンとは
もう一度本書が定義する「ファン」について引いておこう。
「企業やブランド、商品が大切にしている『価値』を支持している人」
お気付きだろうか。ファンを獲得するためには、企業自身が大切にする「価値」がないといけないのだ。まず企業自身が大切な価値を見つけ、提示し、それを「わかる、わかる」と頷いてくれるファンが出てくる。そういう構図である。
安易な「アンバサダーマーケティング」が致命的に見失っているのもこの点だ。企業自身が大切にしている「価値」がないのに、適当にユーザーを巻き込んだらうまい結果が上がってくるだろうなどと小ばかにした施策は、当然うまくいかない。ファンを安く使える小間使いのように扱うのはまったくファンベースではないのだ。
さいごに
本書では「ファンベースが必然な3つの理由」として以下の三つが提示されている。
(1)ファンは売り上げの大半を支え、伸ばしてくれるから
(2)時代的・社会的にファンを大切にすることがより重要になってきたから
(3)ファンが新たなファンを作ってくれるから
おそらくこれは正しいだろうし、2020年になってよりその傾向は強まっていると感じる。
どちらにせよ、嘘はバレるものだ。そして、一度バレた嘘はずっとついて回る。だからまずは、愛着が持てる自社製品を作ること。そして、それに共感を感じ、愛着をもち、信頼してくれるファンを増やし、また一緒に活動していくこと。
それが非コモディティ商品を売り広げていくためには必要な行為であろう。