ブログ「見て歩く者」で毎週月曜日に更新されている「出版業界関連の気になるニュースまとめ」の2016年分をまとめた本。
普段「見て歩く者」にはお世話になっているので、感謝の意味も込めて購入し読んでみたのだが、予想以上に面白かった。おおむね「出版業界関連の気になるニュースまとめ」の記事には目を通しているので、新しい発見はないかと思いきや、そうでもないのが「本」の面白いところだ。
コンテンツ自体はブログで公開されているのだが、本書ではそれぞれのニュースがカテゴリごとに再編されている。そこで新しい価値が生まれていると言っていいだろう。
たとえば、第四章「第四章 読み放題ビジネスの光と影」では、紆余曲折あった読み放題サービスの顛末に関する記事が時系列に並んでいて、新しいサービスが始まる直前の噂話、開始当時のユーザーの反応、トラブルが起こったときの業界の対応といったものが順を追って確認できる。もちろん、その他の章でも同様だ。
そうしたものを読んでいると、個々のニュース記事がクロノジカルな文脈を帯びてくるのが体感できる。これは、毎週一回まとめ的にピックアップされる記事を読んでいたのとはまた違った体験である。流れが見えてくるのだ。
あと、一年前に起きた出来事なのに、この本を読むまですっかり忘れていたことがたくさんあることにも気がついた＿＿「どうやって人生を想像するのだ（アニメか？）」などは特にそう＿＿。私たちというか、ウェブの話題の消化率はとんでもなく高いのだろう。だからこそ、こうして「一年間を通して振り返ってみる」ことは案外大切である。
言いっぱなしになりがちなウェブにおいて、「本」としてまとめることの意義もおそらくこの辺にあるに違いない。
▼目次情報：
はじめに
第一章 電子出版の2016年を予想
第二章 ウェブメディア狂騒曲
第三章 著者と出版社（者）、本と雑誌の制作環境
第四章 読み放題ビジネスの光と影
第五章 電子書店栄枯盛衰
第六章 投稿サイトとセルフパブリッシング
第七章 海外のアマゾン
第八章 海外その他のニュース
第九章 技術標準化、ウェブと電書の融合
第十章 ハードウェアの進化
第十一章 電子出版と流通
第十二章 物理本の流通、書店と取次
第十三章 著作権など法律や行政
第十四章 教育と図書館関連
第十五章 出版関連企業の業績情報
第十六章 市況全般の分析や論評
第十七章 2016年回顧
第十八章 2017年の予想
おわりに
