ファンタジー+法廷もの。
もちろんまっとうではない弁護士が主人公サイドになるわけで、『リーガル・ハイ』のファンタジー版をイメージすればいいだろうか。小さな法廷をいくつかはさんで、主人公サイドのもう一人アイリが抱える大きな法廷へと話は流れていく。
もちろん、魔法が使えるファンタジー世界で法廷ものをやるのは難しい。なにせ、魔法があれば凶器について心配することも、アリバイ工作する必要もなくなる。それを切り崩すミステリーも成立しない。本作では、「魔法はなんでもできるわけではない」という制約でその問題を解決している。瞬間移動や精神支配が不可能であれば、状況の設定次第でミステリーは成立する。
その手法は見事なのだが、逆に状況が限定されすぎてしまい、著者からの極端な逸脱がない限りにおいて、犯人になりうる人物が少なすぎるという問題が生じている。その意味で、意外性にはやや欠けるオチではある。しかし、それはそれとしてファンタジー的法廷というのは面白い。私たちの情報摂取にとってファンタジー世界が当たり前になりつつあるからこそ、楽しめる雰囲気でもあるのだろう。
蘇之一行 イラスト:ゆーげん [KADOKAWA 2017]
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