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『働くということ』(黒井千次)

『働くということ』とタイトルは同じだが、方向性は逆である。

こちらは著者一人の、「働く」という実体験を追いかけている。一人の人生の中の「働くこと」について。それを振り返りながら、働くことが人生に与える影響について考察していく。

働くことについて考えるためには、複数の働き方について知っておきたい。しかも、知識だけでなく実体験として知っている方が望ましい。少なくとも、その方がうまく相対化できるだろう。

実際、サラリーマンとフリーランスは同じところも多いが、違うところも多い。それは労働条件だけの話ではなく、収入の量でもなく、この社会の中にいかに位置づけられるのか、ということも含まれる。

そうした社会からの作用は、契約書を眺めているだけでは決して見えてこない。

仕事というものは、私たちと社会を接続するものである。ある種のメディアと言うこともできるかもしれない。人生の長い時間を仕事に費やすわけだから、それについてはできるだけいろいろなことを考えておきたいところである。

働くということ -実社会との出会い- (講談社現代新書)
黒井 千次[講談社 1982]

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