ひさびさに「早く教えてよ」と思ってしまった。
前々から名前は知っていたのだ。たとえば、「たけの書見台」などで言及されていたのでその存在とタイトルくらいは把握していた。でも、「まあ、Fateシリーズ追いかけていたらキリないしな」と思い、ろくに調べもせず放置していた。
少し距離感が変わったのは、『Fate/strange Fake』を読み始めてからだ。この作品には、エルメロイ教室の異端児が登場し、そこでエルメロイII世とのパスがつながる。そして、その二世が彼ということもなんとなくわかる。
そうか、成長した彼はこうなったのか……、という感慨みたいなものはあったが、それでも事件簿を読むまでには至らなかった。
しかし、アニメ化されるはこびとなり、何度もこの作品が目に付くようになった。そして、ある日、私の目に止まったのだ。作者:三田誠という文字が。
なんといっても、私は三田誠作品が好きである。『レンタルマギカ』も『クロス×レガリア』も『イスカリオテ』も全巻制覇した。特に『レンタルマギカ』の世界観は大好物である。
そんな私が、彼が書き下ろすFateの世界を放置しておくだろうか。否、断じて否である。だから、本当に誰か早く教えて欲しかった。アルゴリズムだったら簡単な気がするのだが、そうでもないのだろうか。とにかく、現代では生み出される作品が多いので、そのすべてをチェックして回ることは不可能に近い。ライトノベルレーベルでも、毎月の新刊をチェックしているのは、本当のごく少数に限られる。だから、私はいろいろなものを見落としているのだろう。
という話はさておき、本作は非常に楽しい。『レンタルマギカ』がお好みならば、太鼓判を押せる。複数の交じり合う技術体系。暗く、狂った世界。それでいて前に進もうとする人たち。しかし、それははたして前と言えるのか……。
シリーズ的には、「魔法がある世界のミステリ」という感じで構成されているのだが、もちろん犯人を真剣に探す作品ではない。ミステリアスな雰囲気を楽しむという意味でのミステリーである。
三田誠 イラスト:坂本みねぢ 原著:TYPE-MOON [KADOKAWA 2019]