チートものである。タイトルから全力で主張しているが、まごうことなくチートものである。
強い。とにかく強い。異世界に召喚された二人の主人公:太一と凛は、性質は異なるものの、圧倒的な力を有している。が、圧倒的楽勝に万事をこなしていく、というわけではなく、危機に対して乗り越える力を持つ、くらいではあるが、それでも彼らが潜在的に遇されていることは間違いない。
ただし、一人ではなく、二人というのが本作の特徴ではあろう。異世界への転生は、たったひとり、ペア、数名のチーム、クラス全体、などなど規模はいろいろあるのだが、案外ペアは少ない。
『ノーゲーム・ノーライフ』はペア召喚の一例だが、実際のところ、あの二人は「ふたりでひとり」な部分があり、それぞれの自我が、固有の方向に向かって伸びていく要素は薄い。その点、本作は別々の強さを有する転生者(+チート)である。
しかしながら、興味深いのが、魔術師としてまっとうに強いのが女性である凛であり、ペアである太一の方は、異端というか「欠けた」強さである、という点だ。
この「欠けた」(であるが故に的)強さというパターンは、ほかのライトノベル作品にも出てくるのだが、ほとんどすべて男性がその役割を担っている。そして、その「欠けた」性を埋めるものが現れるのだが、もちろんそれは女性的、というよりもむしろ母性的なものになる。
そう考えると、これはこれで神話的なものの変形なのかな、とも思えるのだが、まあ、そんなことは気にしないでチートを楽しもう。
原作:内田健, 作画:鈴羅木かりん,キャラクター原案:Nardack [KADOKAWA/角川書店 2017]