主人公は異世界に勇者として召喚される。何やら特殊な力があるようだ。他にも三人がいて、それぞれに「武器」を持っている。しかし、主人公:岩谷尚文(ナオフミ)が持つのは盾だった。
まあ、それでもいい。パーティーはチームワークが大切だ。剣が攻撃し、盾が守ればいい。しかし、この世界のルールはそうは問屋が卸さない。勇者がパーティーを組んで戦うと、経験値効率が落ちるというのだ。
結果、ナオフミら勇者四人は、それぞれ別にパーティーを組むことになる。それが、彼の不幸の始まりだった。
というわけで、本作は一応チート系ではあるが、非常に暗い。そして、重い。主人公のかっこよい活躍は──少なくとも最初の数巻は──出てこない。「ゴブリン・スレイヤー」シリーズよりは復讐心は薄いかもしれないが、それでも本書の始まりは憎悪である。あるいは理不尽な世界に対する抗いである。
それでいて、本書はそのままの方向には流れていかない。彼は彼なりに、この世界に価値を見出す。あるいは価値を見出される。
とは言え、それはしばらく後の巻の話だ。その辺を踏まえて手に取られるとよいだろう。
著:アネコユサギ イラスト:弥南せいら [KADOKAWA/メディアファクトリー 2013]
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