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『やめられなくなる、小さな習慣』(佐々木正悟)

そう。やめられなくなるのだ。

私はブログを14年以上更新している。そのうち8年くらいはだいたい毎日更新だった。もしかしたら、「すごく意志が強いんですね」みたいに思われるかもしれないがそんなことは全然ない。私の意志など、ひのきのぼうくらいの強度である。

単にやめられないのだ。強い意志ややる気などがなくても、ついついブログを書いてしまっている。むしろ書かないと、気持ち悪さというか、残念さというか、ゲームで失点するのをわざわざ見過ごすような居心地の悪さが湧いてくる。

そこまで行けば何かを続けることはそんなに難しくない。体が勝手に(つまり脳が勝手に)それをやろうとするのだから、それをなるべく押し留めなければいいだけだ。

しかも、「ブログを更新する」という習慣は、他の習慣にも伝播する。たとえば、ブログを書くためにはネタが必要なので、せこせことネタを記録するようになる。また、使えそうな記事をクリップする習慣も生まれる。何かトラブルに遭遇したら、「しめしめ、これで一記事書ける」と思うようになるし、何かを買うときに「これはブログのため」と言い訳するようにもなる。

習慣はつながっているのだ。

小さな習慣から広がる

本書の要点は三つあるように思う。

・「小さな習慣」を身につけることは思うほど簡単ではない
・習慣化するには報酬が必要
・他の習慣にまで影響を及ぼすような習慣に目をつける

まず、一つ目だ。よくCMなどで「一日たった五分だけで」といった謳い文句を耳にするのだが、それを聞くたびに「毎日五分をなめるんじゃねぇ」と憤りそうになる、というのは嘘だが、そこで軽んじられているものに思いを馳せたくなる。毎日5分を仮に一ヶ月繰り返せる人ならば、そのCMで紹介されているものの手を借りなくても、望む結果を得られるだろう。それができないから、そういう商品のニーズが生まれているのだ。

「小さな習慣」が簡単にそうに思えるのは、日割りすれば高額商品が「一日コーヒー1杯分で」とアピールできるのに等しい。ある種のレトリックなのである。本書が指摘するように、たとえ小さい行動であっても「結果が出るまで継続する」は、そうとうに難しい。少なくとも、無策で取り組んで成功する見込みは低い。なぜなら、日常には他の報酬によって習慣化された行動が満ち溢れているからだ。

二つ目のポイントはそこである。ある行動に報酬があるとき、その行動は習慣化される。それがなければされない。非常に簡単なルールだ。ようするに、行動心理学のスタンスである。

ここで言う「報酬」は、あなたにとっての報酬というよりも、むしろ(あなたの)脳にとっての報酬、と言い換えた方がわかりやすいかもしれない。金銭的なリターンだけに留まるものではないわけだ。それこそ、ゲーム世界の中でしか意義がない数字が増えることだって、脳にとっては報酬になる。

で、そのような報酬が得られるような行動を脳は好んで選択してしまう。というかもはやそれは選択というよりも反応といった方が近いだろう。非常に本能的な、抗いにくい行動選択の重力が発生する。逆に言えば、今の自分が持っている習慣の裏には、何かしらの報酬がある、ということでもある。

以上二つのポイントを絡めれば、シンプルな指針が生まれる。徹底的に報酬に注意を払い、小さな習慣に取り組む。

しかし、それだけでは貧弱である(あるいはそのように思える)。というところで出てくるのが、習慣の連鎖だ。

本書では早起きが例に挙げられているが、先ほど私が書いたブログもそうだろう。そうした他の日常的行動(≒習慣)に影響を与える習慣を見定めて、それに注力すれば、より大きな影響を与えることができる。つまり、レバレッジが効いているわけだ。

それを補佐するためのさまざまなテクニックが本書では開示されているし、またそれとは少し違う「悪癖を絶ちきる」という話も出てくる。これはこれで面白い話である。

まとめ

総じて言えば、自分が持っている習慣や、自分が得ている報酬、そして他の習慣に影響を与えるような習慣(ハブ習慣とでも呼ぼうか)について思いを馳せることが、これらを実施していく上では重要であろう。それを行う上で、日々の記録は大変に役立つ。というか、それがなければほとんど無理だろう。記録は大切なのである。

とりあえず、自分の時間とエネルギーとお金、つまり自分が持つ資源を何に使っているのかについて、少し自覚的になった方がいい、ということは言えるかもしれない。

▼目次データ:

第1章 習慣化のカギは報酬にある
第2章 習慣化は技術。練習すればできる
第3章 悪癖に流れ込むエネルギーをせき止める
第4章 習慣の連鎖反応で生活を一新する

やめられなくなる、小さな習慣
佐々木正悟 [ソーテック社 2018]

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