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『圕の大魔術師(1)』(泉光)

難しい。

表紙カバーには「圕の大魔術師」とあるが、Amazonのタイトルは「図書館の大魔術師」となっている。いったいどちらをこの記事のタイトルにすればいいのか。もちろん読みは同じである。

それにしても、なかなかしゃれた漢字ではないか。くにがまえの中に書。書の在る場所、書のための空間。まさしく図書館だ。そんな漢字を引っ張り出してきた風情を尊重し、当記事では圕の表記を採用させていただくことにする。

さて、世界はいろいろなものでできている。人を含む動植物がそうだし、それらがなす「仕事」もそうだ。そして、人類はそこに「本」も持ち込んだ。そして、ほとんどそれこそが人間と他の生物を分ける要素といっていい。地域を越え、時間を越え、知識や技術、そして心の在り様を伝達する。そんな術(すべ)を持つ生物種は、人間だけである。それが本という文化なのだ。

そのような本を護り、それが内包する知識を市民へと受け渡すこと。それが図書館の役割である。

同じように図書館の役割に焦点を当てた有川浩の『図書館戦争』は、その舞台を現代日本としたが、こちらは異世界ファンタジーで、タイトル通り魔術師も登場する。しかし、どちらからも共通して感じるのは、本という存在への深い愛情である。しかもその愛情は、単に物や言葉だけに向けられたものではない。その言葉を紡ぎ、形を持って定着化させた人間への愛情ともつながっている。つまり、人やその仕事にも視線は向けられている。

本は大切な存在である。そこに含まれている情報も同様だ。しかし、本至上主義、情報原理主義に陥ってしまうのは、どこかしら危うい。それを生み出した世界を見逃してしまっている。

世界は、いろいろなものでできている。私たちは、その世界の中に住み、世界を構成しているのだ。

図書館の大魔術師(1) (アフタヌーンコミックス)
泉光[講談社 2018]

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