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『わたしの魔術コンサルタント』(羽場楽人)

「ライトボイルド」__ハードボイルドの要素を入れたライトノベル__な作品ということで、ハードボイルド好きとしては楽しめた。

というか、「そうか、自分はこういうのが読みたかったんだな」と気づかされた作品でもある。振り返ると、『アリスの物語』もハードボイルド寄りなライトノベルであった。自分が書くもの=自分が好きなもの、なのだろう。

本作は、通常世界(=私たちが今生きている世界)に魔法が登場するファンタジーである。しかし、科学と魔法の対峙や、魔法が使える人間と使えない人間から生じる格差や差別といった問題は扱っていない。むしろ、この世界の魔法は、まさしくハードボイルド世界における拳銃のような扱いなのだ。適度な重さ、異物感がそこにはある。引き出しの中にしまわれている拳銃のような異物感。

文体も読みやすい程度には軽妙で、しかし走りすぎない硬度もある。話の筋も楽しめるし、キャラクターもきちんと立っている。世界観に奥行きがあるのも、続編を期待させる。

なんだかんだで、読むのが年末になってしまったが、今年読んだライトノベルの中でも、ずいぶん上の方にランクしそうな作品だった。ハードボイルド作品、あるいはライトノベルであれば『神様のメモ帳』あたりが好きならば楽しめると思う。

わたしの魔術コンサルタント (電撃文庫)
羽場楽人 イラスト: 笹森 トモエ[KADOKAWA 2016]

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