勇者は勇者であり、村人は村人である。
勇者はそうなるべくして勇者の資質を与えられ、村人として生まれたものはその資質を持たない。カースト制度のような絶対的な溝がそこにはある。もし、そんな村人が、最高レベル999に到達したらどうなるか。
一見、もともと弱いものが力を得て大きなことを為す、というストーリーに思える。しかし、本作が提示するのはややメタな視点である。村人と冒険者という「役割」はなぜ存在するのか。人間と魔族はなぜ対立するのか。そして、なぜモンスターを倒すと、人間が使うお金が湧いて出てくるのか。
そのようなRPGファンタジーではごく当たり前の設定に対して、本作はメタな視点をぶつけ、それを物語の駆動力としていく。
つまり本作は、あらかじめ与えられている「制度」に対する抗いである。すでに引かれている線を、新たに引き直そうとする戦いである。
もちろん、そうは言っても、どこかに線は残る。線のない世界は存在しない。ただ、それを引き直せると知っていることは大きな力になるだろう。
漫画:岩元健一,原作:星月子猫,キャラクター原案:ふーみ [KADOKAWA/角川書店 2017]
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