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『ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミンXI』(宇野 朴人)

現状までのシリーズに分節点を設定するなら、1〜6がまず序盤となるだろう。ここまでは、ファンタジーの(ややへそ曲がりな)英雄譚といった形だった。大きく動いたのは7巻で、物語の根本を動かす出来事が描かれている。その動揺がひとまず落ち着くのが10巻で、11巻からはそこからの話となる。つまり、本巻は新たな分節点である。

フォーカスされているのはシャミーユと(前巻で意味ありげに登場した)ヴァッキェで、主人公であるはずのソロークはほとんど無視してストーリーは進行していく。また、もう一つハロの葛藤が並行で語られていて、それはシャミーユ:ヴァッキェと、ハロ:パトレンシーナの形で暗示される。シャミーユに明るさが宿ることで、むしろ彼女を形作っていたものが崩れていく(緩んでいく)ことと、ハロが過去を飲み込むことでより強固に、あるいは新たな形に変わっていくことが対比されているのだ。

そう考えると、本シリーズは「ペア」というナイフで、いくつかの構図を切り取れるように思う。

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミンXI (電撃文庫)
宇野 朴人[KADOKAWA 2016]

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