似たものが登場することで、それまで当たり前と思われたものが相対化されることはよくある。現代なら、紙の本と電子書籍がそれだ。その二つを比べてみることで、物事の本質に深くアプローチできる。
本書では、人間と人間に近しいもの(AI)の対比が行われている。SFでは珍しくない風景だ。しかし、本作はノンフィクションである。さらに言えば、舞台設定が面白い。
AI(正確には対話アルゴリズム)の「人間らしさ」を測るコンテストに、人間が出場するのだ。
さて、あなたならどのような戦略を採るだろうか。ごく普通に人間と対話する? それとも、対話相手が「人間らしい」と思うような対話を心がける?
じゃあ、その「人間らしさ」って一体何なんだろうか。
考えてみると、これが難しい問いであることに気がつく。あなたはそれを明瞭に定義できるだろうか。
チューリング・テストの本質もここにある。「人間」の定義とは、誰かがそれを「人間」だと認めることだ。私たちは遺伝子解析情報などを一切用いずに誰かを「人間」かどうか決めている。つまりそれはいくらでも拡張されうるものなのだ。
当然、機械技術が進めば、人間の定義も広まっていくだろう。少々の混乱と共に。
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