少しだけファンタジーで、結構SF。読んでいて、パウロ・コエーリョの『アルケミスト』を思い出していた。もちろん話は全然違うのだが、いわゆる「旅もの」という点では共通しているし、幻想的な要素も近い。でも、もう一度言うが全然違う話である。
本作に限ったことではないが、著者は独特の世界観で作品を作り上げる。その世界観を無理矢理一言で言い表すなら、「無音」であろう。それも、まったく音がないのではなく、ものすごい騒音の建物から外に出たときに聞こえてくる、あの「無音」である。しーん。
著者は感情や人間の心といったものを、一度突き放す。そして、それをグルグルと周囲から眺める。で、それを再び招き入れるかと思えば、そんなに安っぽく落とすことはない。でも、どこからともなくじんわりとしみこんでくる。なんだか不思議な感覚だ。
いささかタイトルがチャレンジしすぎていて、内容が分かりにくいのが難点だが__私は「星に降る雪」というのを考えた__、他では味わえない物語を提供してくれることは確かである。
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2 thoughts on “『長袖にきがえました』(犬子 蓮木)”