0

アニメ『痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。』

ステ振りは重要である。レベルアップ時のステータスポイントを、どのように割り振るかによって、キャラクターの性質は変わり、とりうる戦略もまた変わってくる。

ある人はバランスよくステータスを割り振り、ある人は特定の能力に極端に割り振る。基本的に、一度割り振ったステータスはもう取り戻せないので、ステ振りは言葉通り決定的である。

私はスパロボだと、ガンダム系の機体に機動力をほぼ全振りし、余った分でENを上げる。そして、単騎で敵陣に突っ込んで、すべての敵の攻撃を回避して無双を繰り広げるんのが好きだ。人にっては装甲に全振りしてほとんどダメージを食らわないようにするかもしれない。

本作の主人公メイプルこと本条楓も同じような思考の持ち主だ。徹底的な防御力へのステ振りによって、ダメージを受けないようにしている。理由が「痛いのは嫌だから」というのはタイトルにも示されている通りだ。その選択自身にどこもチートなものはない。あくまでプレイヤーの一つの選択である。

もちろん、防御力だけでは戦闘に勝つのは難しい。そこで活躍するのがメイプルのパートナーであるサリーこと白峯理沙だ。彼女はメイプルとは違い防御力へのステ振りをいっさいあきらめて、回避特化のステ振りを突き詰めている。私のガンダムと同じだ。

この二人のでこぼこコンビで数々の困難を乗り越えていくストーリー……であるかのように思われる。実際、序盤の数話はそういう雰囲気が漂っている。が、話が少しずつ進むにつれ、「でこぼこコンビ」感は薄れ、チート感が、もっといえば「何でもあり」感が出てくる。

いったいどこからその歯車が狂ったのかは定かではない。レアスキル【毒竜】の獲得は、ストーリーを前に進めるために必要だっただろうし、幻獣の取得はこの手のお話で必須のかわいいサポートキャラの登場で避けがたいところだっただろうが、その辺から「レアなものを入手する」傾向が強まり、どんどん話はそちらに向かっていく。

後半はもう、レアスキルのごり押しである。ギルドも結成するが、結局はメイプルのごり押しで話が決着する。ただし、サリーの凶器的な活動が、本作の隠し味になっている点は忘れてはいけない。その意味で、防御力特化と俊敏性特化という設定自体は残っているが、むしろこの二人の性格的な対比こそが本作の厚みになっているのかもしれない。

と、もしかしたら批判的に本作を見ているように思われるかもしれないが、実際は面白い作品である。当初予想されるストーリー展開からどんどん脱線していく感じが、「どこまでいくんだろうか」と好奇心をかき立てる。結局、ズルズル最後まで見てしまう作品なのだ。


監督:大沼心, 監督:湊未來 [KADOKAWA アニメーション 2020]

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です