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『マインドセット ものを考える力』(ジョン・ネスビッツ)

原題は『Mind Set! Re0set your mind and see the futuer』であり、未来を見通すためのマインドセットの紹介なわけだが、ごく普通に考えてどのような考え方を持っていても、未来を完全に予測することなどできない。

では、本書が無意味なのかというと、そうでもない。紹介されているマインドセットには有用なものも多い。記事末に目次を引用してあるので、それをご覧頂ければ、ふむふむと思うものは見つかるだろう。たとえば、マインドセット4の「正しくある必要はないことを理解せよ」というのは大切な心構えである。もう少し言えば、正しくあること以前に大切なことがある、というところだろうか。特に「正しさ」は相対的、あるいは領域限定的なものであり、その場所から抜け出ると途端に意味を無くすものが多い。そんなことに縛られるよりも、他に気にすべきことはたくさんある。「正しいブログの書き方」とか、そういう文言がいかにばかばかしいかを考えればよく分かるだろう。

しかし、である。マインドセットは、著者が言うように「判断はものの考え方によって決まる」のだからほとんどあらゆる判断のもとになっている重要なものであることは間違いないし、それをよりFeeling goodな方向に持っていきたい気持ちもあるのだが、では、そんな根源的で大切なものが、たった一冊の本を、しかも簡潔にリストアップされた文章を読むだけでバージョンアップできるだろうか、という点が疑問として残る。

つまりはこういうことだ。本書で提示されるマインドセットの有用性自体は否定しない。しかし、問題は自分のマインドセットをどうやってアップデートできるのか、という点にある。本を読むだけでそれを上書きできるなら、別の本を読んだらまたそれが上書きされてしまう。そんな不安定な状態を指針にできるだろうか。そもそも、そんな風に脳のメカニズムは成立しているだろうか。

マインドセットは確かに重要である。しかし、本書のリストを暗記したとしても、それを有用に活用することは難しいであろう。ここで、困難な問いが生まれてくる。では、本の著者はどうしたらより良きマインドセットを読者に提示し、それをインストールしてもらえるようにできるだろうか。

マインドセットについて考えるには、まずこの問いに取り組む必要があるだろう。

▼目次データ:

第一部 マインドセット ものの考え方
マインドセット1 変わらないもののほうが多い
マインドセット2 未来は現在に組み込まれている
マインドセット3 ゲームのスコアに注目せよ
マインドセット4 正しくある必要はないことを理解せよ
マインドセット5 未来はジグソーパズルだ
マインドセット6 パレードの先を行きすぎるな
マインドセット7 変わるか否かは利益次第である
マインドセット8 物事は、常に予想より遅く起きる
マインドセット9 結果を得るには、問題解決よりもチャンスを生かすべし
マインドセット10 足し算は引き算の後で
マインドセット11 テクノロジーの生態を考える

第二部 未来図
第1章 文化―視覚文化による世界の掌握
第2章 経済―国民国家から経済圏へ
第3章 中国―外縁部が中心である
第4章 ヨーロッパ―互いに保証しあった衰退への道
第5章 現代―漸進的変化の時代 イノベーションの宝庫

マインドセット ものを考える力
ジョン・ネスビッツ 監訳 本田直之 翻訳:門田美鈴 [ダイヤモンド社 2008]

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