おそらく生かすものと、殺すものの葛藤というのが、一つのテーマにあるのだろうが、それはあまり前面には浮かび上がってこなかった。むしろ、科学なるものの信奉者が、いかに魔法なるものを受け入れるのか、という葛藤の方が目についた。ついでに言えば、個人に生きるものが、公共のために生きる、ということもテーマではあろう。それぞれの葛藤は、微妙に交じり合いながら、主人公ドクター・ストレンジの心を変化させていく。
アクションは派手であり、何せ魔法があるのだから、結構いろんなことができてしまう。しかし、タイムループ的な部分はSF的でもあり、全体として「魔法世界のお話」という感じはあまり受けない。まあ、高度に発達した科学と魔法に、そう大きな違いはないのだろ。
いかにも皮肉やっぽいストレンジに、ベネディクト・カンバーバッチがばっちり嵌っている。もうそれだけで観るかちがあるんじゃないか、と思うくらいだ。挫折、試練、葛藤、わかれ、新生、という非常にわかりやすい英雄の物語ではあるが、ひねりのなさはあまり気にならない。脚本が良いということだろう。ただ、ラスボス的な存在が、いっそジョーク的で終わってしまったのが、少し気になった。まあ、些細なことではあるが。
監督:スコット・デリクソン [ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 2017]
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