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『電気革命』(デイヴィッド・ボダニス)

副題が「モールス、ファラデー、チューリング」である。このどれかに引っかかるなら間違いなく面白い本。

現代は、電気社会である。これはもうはっきりしている。発電所が軒並み止まれば、我々の社会生活はただちに大混乱に陥る。しかし、その電気は、人類史と共にあったわけではない。天にとどろく稲妻や、ときどき手をびりっとさせる静電気は昔から生活と共にあっただろうが、その力を文化的・文明的に利用できるようになったのは、(長い人類史から比べれば)ごく最近のことである。

本書は、そうした電気の発見から、偉大なる発展までの歴史を追いかける。

とすれば、あたかも技術論中心になりそうだが、本書は技術者や発明家の人となりも合わせて紹介してる。ゆえに読み物としても抜群に面白い。サイモン・シンと同じように、サイエンスのコンテンツをうまく人文的に取り込んでいると言えるだろう。もちろん、技術的な話もわかりやすくフォローされている。

学校教育においては、技術的発見とその貢献者の名前をペアにして覚えることはある。が、それらの発見がいかになされたのか、発見者がいかなる人物だったのかはなかなか知ることができない。しかし、案外そういうエピソードの方が頭にこびりつくものだ。同時代の人の関係や、あるいは一つの系譜にそって技術を「読んで」いくことは、むしろ脳に適していると言える。

生活に身近な電気について知れば、きっとあなたの脳にもたくさんの電流が流れることだろう。電気は、パソコンだけでなく脳も動かしているのだ。

電気革命: モールス、ファラデー、チューリング (新潮文庫)
デイヴィッド・ボダニス [新潮社 2016]

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