奇妙なほどに儚く、恐ろしいほどにドロドロとした物語。
原作は未読なので比較はできないが、作品のテンポは良かった。説明は不足しているが、気になるほどではない。映像も美しい。
声で言えば、トァン役の沢城みゆきさんは実に安心して聞いていられる。それと対比するかのようなミァハ役の上田麗奈さんは、危ういところをうろちょろしていて、それがキャラクターにばっちりとはまっていた。
作品としては、この社会で人を締め付けてくるものが象徴的に表現されている。感じられるのは、拒絶や嫌悪ではない。むしろそれは、憎悪に近いものだ。一見クールなテイストの作品なのだが、長い間地下室にしまい込まれていた蜂蜜のようなドロドロした何かが作品全体を覆っている。どんな結果だったらハッピーエンドなのかは、まったくわからない。むしろ、そうしたフレームを拒絶しているかのようにも思える。
人は意識の上で生きているのだろうか。それとも意識に束縛されて生きているのだろうか。意識とはなんだろうか。最終的に人はそれを超越するのだろうか。それとも、自然の淘汰圧によって棄てさせられることになるのだろうか。
乾いた銃撃の音だけが、頭の中に残ってしまう。
原作:伊藤計劃 監督:なかむらたかし/マイケル・アリアス[アニプレックス 2016]
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