0

『「会社は無理ゲーな人がノビノビ稼ぐ方法』(堀田孝治)

編集者さまよりご献本頂いた。感謝。


本書は独立本である。会社から独立し、自分で仕事をしたいと思う人のための指南書である。

とは言え「会社員なんてダサい。これからはフリーランスの時代だ!」のような煽りではない。「会社員に向かない人」の特徴を列挙し、そうした人たちに向けて、「あなたが力を注ぐ対象は会社ではなくてもよいのでは」という提案が行われている。言い換えれば、「働き方」の選択肢を増やそうというのが本書のテーマであろう。

その意味で、本書は「働き方」について再考する一冊でもある。昨今は「働き方改革」が喧しいわけだが、しかしその内実が「一つの会社に依存すること」であるならば何も変わっていない。副業や独立が視野に入るだけでなく、さまざまな状況において職歴を変転させていくことがあたり前になる状態こそ、真なる働き方改革の達成であろう。

私自身も、長らくフリーターを続け、そこからコンビニの店長として勤務して、今はフリーランスの物書きとして生きている。こうやって書いていても脈絡がほとんど感じられないことに苦笑してしまうくらいだ。それくらい計画も野心も持たず、「まあ、なんとかなるんじゃないか」という甘い見通して”ジョブチェンジ”をしたわけだが、そうした私自身の体験からしても、本書の内容は頷けるものが多い。

以下が目次である。

第1章 「会社員には向かない人」の10の特徴

第2章 仕事が創れれば、なんとかなる

第3章 お金と仲良くなれば、怖くなくなる

第4章 時間の使い方で、成果が変わる

第5章 人づきあいで、成功が見える

第6章 メンタルを整えて、幸せになる

まず第一章では”「会社員には向かない人」の10の特徴”が挙げられる。科学的な説明の構成ではないが、なるほどと腑に落ちるものは多い。

  • 小さな失敗も気になって、しかもずっと引きずってしまう
  • 会社にいるだけで、なぜか緊張して疲れる
  • 「働いた分だけのお金をもらいたい」と思っている
  • 「自分がやったほうが早い」と思ってしまう
  • 「根回しなんて……」とイライラする
  • 人間関係ではなく、仕事の中身で勝負したい
  • 完璧主義で、どんな仕事でも手が抜けない
  • グレーが苦手で、白黒はっきりとさせてしまう
  • 「自分に合った仕事がしたい」と思っている
  • 「ジャニーさん」よりも「山P」になりたい

1や2は、性格的なものだろうが、3〜7は、まっすぐに「仕事観」に関わってくる。これを調整するのはなかなか難しい。だからといって他に合わせ続けていると摩耗してしまう。

しかし、慌てて付け加えるが、これは「仕事がイヤだ。サボリたい」という欲求を抱えている人とは根本的に違っているのである。「自分ならもっとうまくやれる」「さらに良い方法があるのになぜそれを採用しないのか」といった、十全のコミットを投与したいのに、なかなかそれが叶わない(あるいは、それを行うとむしろ仕事がうまく進まなくなる)という状況にイライラを感じている人ということだ。そういう人ならば、たしかに独立した方がその力を発揮できる場合が多いだろう。

逆に、単に「仕事がイヤだ」という気持ちを、何らかの自己啓発ですり替えられて独立をしてしまうと、結局「仕事がイヤだ」という部分が変わっていないので、後々苦労することになる。そこは自分の内面と対話する必要があるだろう。

さて、そうした点を踏まえて以降の章では独立に関するさまざまなノウハウが語られる。多くはこれから独立を目指す人の不安に答える形でその解決が提示されている。個人的に重要だと感じたのは、

・仕事は「創れる」ことを理解する
・値段を安くつけない
・仕事の指標を複数持つ
・リピーターが大切
・”看板”に気を配る

あたりだろうか。で、こうしたことは、私はコンビニ店長時代にがっつりと学んでいる。客商売のやり方から、物書きの仕事のやり方を学んだわけである。もちろんそこにはマーケティングやらプロモーションの方法も含まれているのだが、それ以上に「文章の書き方」(どのような精神を持って文章書きに取り組むのか)という点が大きい。執筆業とはサービス業なのである(少なくとも、私はそのように考えてこの仕事をしている)。

そこから言えることは、たとえ独立を目指しているにしても会社での仕事は手抜きしないほうが良い、ということだ。手抜きで学べることは本当に少ない。本書でも、独立を見据えた上で、そのための実力を磨くための場数として会社の仕事を捉え直すことが提案されているが、それと同じである。結局、自分は自分が身につけた力で勝負するしかない。フリーランスになったからといって、急にパワーが目覚めてきて「スーパー自分」とかになるわけではないのだ。

誰にも言われなくてもついつい自分がこだわってしまうこと、他の人の仕事を見ていて「なぜ、あれをしないんだろうな」とうっかり感じてしまうこと。それがその人の「個性の素」になるし、それを育てていくことが力にもなる。そして、その自分の「こだわり」が会社に歓待されないならば、それは独立を考える一つの合図になるかもしれない。むろん、別の会社を検討することも十分に含まれる。

一度会社員を選んだら、そのままずっと会社員であり続けなければならないわけでもないし、独立したからといって後から会社に勤め直すことが「失敗」なわけでもない。自分の能力を把握し、それを磨き、うまく活かせる場所を求めること(なければ、それをつくること)。そうした行いが、「働くこと」のあたり前として認識されるならば、私たちはわずらわしい「ブルシットジョブ」のような呪いから距離を置くことができるようになるだろう。

無論、「仕事」に何も感慨を覚えない人は、上記の話は一切無視して構わない。それもまた多様性の一つの在り方である。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です