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原稿の手応に潜む問題とその対策

大きな原稿を書くとき、ネックになるのは「手応え」である。あるいは進捗感と言ってもいい。

さあ、第二章の原稿を書こう。テキストファイルを開く。46KBの1万5867文字。1時間ほど作業をする。うまい言葉が見つからない。500文字書き足して、200文字消す。さらに200文字。トータルで100文字は増えた。

次の日も、原稿に取りかかる。テキストファイルを開く。45KBの1万5767文字。昨日とほとんど変わらない風景。昨日とほとんど変わらない風景。

こういうのが続くとけっこうキツイ。精神的にクるものがある。ツルツルすべる巨大なこんにゃくの壁をのぼろうとしているような感覚にはまり込んでしまう。

これがたとえばブログであるならば、一記事は2000文字程度であり、1時間かそこらをかければ原稿は完成する。そして、それが記事となり公開される。そこには明確な手応えがある。だから、3日でも、5日でも、10日でも続けていける。一日ごとの負担はすごくすごく小さい。

では、10万字の原稿であればどうか。一日2000字のペースで計算すれば50日だ。ただし構造を組み立てる必要もあるから、まあ、60日__二ヶ月を見ておこう。この間、「ブログの記事を書いて公開する」というような手応えは一切発生しない。進んでいるかどうかもわからない森の中を、60日間も歩き続けなければいけないのだ。

だから、対策が必要だ。書き上げるための戦略が必要だ。

  • 現在地点を確認できるようにする
  • 途中成果物を細かく作る
  • 工程を分ける

現在地点を確認できるようにする

ようはプロジェクトマネジメント。タスクリストなりガントチャートなりを作って、「自分は今これだけ進んでいる」ということを確認できるようにする。

ただし、構想の罠にはまり込んで実際に作業が進んでいない場合は、どうしようもない。

途中成果物を細かく作る

編集者がいるならば、全体稿が出来てからではなく、章ごとに送信する。あるいは、もっと細かくてもいい。

ただし私は全体をかき上げてからまた調整したくなるので、このやり方には少しの抵抗感を覚える。なぜなら送った(=読んでもらった)原稿がかなりの大手術を経て変わってしまうこともあるからだ。そういう無駄を省きたいと思い、全部が完成してから送ろうと企むのだが、だいたい詰まるので、やはり細かく送った方が良いのだろう。

問題は、編集者がいない場合。その場合は、誰かしらに事前レビュアーをお願いして、その人向けに送信するとよいのだろう。この場合の「送信」が、ある種の手応えとして機能してくれるはずだ。

もし、それも無理ならば?

作業記録を付ければいいだろう。「無茶苦茶悩んで、一行ほどしか進まなかった」という記述であっても、作業の記録にはなる。少なくとも、これらは原稿の文字数と違って減ることはない。それが結構重要なのだ。

工程を分ける

概ね手が止まるのは、「構成を考え」ながら「原稿を書いて」いるときである。文字を付け足しながら、順番を変えたり、構成を整えたりしようとするとき、にっちもさっちもいかなくなる傾向が強いように思う。

だから、作業を切り分ける。「文字を増やす工程」では、ともかく文字を増やす。不十分でも、不明瞭であってもいいから、その工程期間ではひたすら文字を増やしていく。で、それが一通り終わったら手直しにかかる。ポイントは、「一通り終わった」段階で、それなりの手応えが発生している点だ。心理的には、一つの区切りとして働いてくれるだろう。

さいごに

以上、「できるだけ、順調に進めるための戦略」というものを考えてみた。他の作家の手法なども参考しながら、もう少し全体像をまとめてみたい。

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