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『ときほぐす手帳: いいことばかりが続くわけじゃない日々をゆるやかにつむぐ私のノートの使い方』(Marie)

本書は、『ちいさなくふうとノート術』の続編である。それぞれの本の副題を見てもそれはなんとなく想像がつく。

  • 『ちいさなくふうとノート術: ごちゃごちゃの頭を整理して楽しく暮らす私のノートの使い方』
  • 『ときほぐす手帳: いいことばかりが続くわけじゃない日々をゆるやかにつむぐ私のノートの使い方』

どちらも「私のノートの使い方」が末にきている。これはジェネラル(一般的)な方法論ではなく、あくまで自分の使い方ですよ、という留保でもあるのだが、だからこそそれぞれの本には「リアル」が宿っている。

言うまでもなく、書店のビジネス書コーナーに並ぶ本はある種のファンタジーである。苦難に見舞われた主人公が、さまざまな困難を打破して、冒険の成果を手にするストーリーに私たちの心が興奮するのと同じ効果が期待されている。当然、ファンタジー作品がそうであるように、「リアル」な話はあまり出てこない。リアルな話は、興ざめするからだ。

一つのプロダクトの作り方として、もちろんそのような整形はまっとうなものなのだが、しかしノウハウ本で言えば、「じゃあ、リアルな問題にどう対処したらいいんですか」という話題がまったく置き去りにされてしまう問題はある。ファンタジーで教訓や心意気は学べたとしても、どうやって剣を振ってゴブリンと戦えばいいのかまではわからない。そして、私たちは日々リアルな問題に直面しているのである。

本書は『ちいさなくふうとノート術』の続編であるので、たとえばバレットジャーナルという手法が一つの前提になっているのだが、その手法をそのまま「真面目」にやろうとしても疲れるし、うまくできないよね、という視点が登場する。ビジネス書には出てこない視点だ。もちろん、うまくできないのは「その人」だけかもしれない。だから、この話題はジェネラルには語られない。あくまで「私の話」になる。しかし、まさに同様の「私」にはその話題が必要なのである。

ですが、やりすぎには注意です。
「意義のあること」が日々起こるような生き方をするべきだと、自分を追いつめてしまったことがありました。日々のできごとの中に「自分の未来にとって価値のあること・成功や解決に結びつくこと」を探しすぎて追い詰められ、深く暗い森に迷い込んでしまったのです。なんにでも真面目に取り組み、結果を出そうとするタイプの方は要注意です。

トリガーリストも、全部の質問に対して一生懸命考えてしまって月の初めから疲れてしまうこともあるので、まじめな人はあまり深刻にとらえずにすむようなスタイルにしたほうがいいかもしれません。私は一時期トリガーリストをチェックしては「私の生活には何か抜けているものがあるはずだ」と考えることが心の負担になってしまったことがありました。

コレクションページは、ページを作った時がクライマックスになりがちです。

そんな中、手帳でなんとか自分を立て直そうとしてみましたが、幸せや成功を強気でもぎ取りに行くポジティブ思考の手帳術を読んでは、余計に気持ちが落ち込み、何か違うなあと悶々とする時期が続きました。

どれも「そうそう、そうだよね」と膝を打ち過ぎて青あざができそうになるくらいに共感できる話だ。完成されたノウハウ書と自分ひとりで向き合っていると、いかにも「できないのは自分が悪い」という気持ちが盛り上がるのだが、しかしこうして同種の人が存在していることに気がつくと、「いや、まてよ」という気持ちがカウンターで湧いてくるようになる。そうしたカウンター・マインドは、ノウハウ本との付き合い方を変えるきっかけにもなってくれるだろう。

その意味で、本書は自分のこんがらがった気持ちを「ときほぐす」ための手帳の使い方であるが、メタとしてその「手帳の使い方」もまたこんがらがってしまう状態をも射程に入れている。なかなか複雑な話だが、人間存在が複雑なのだから仕方がないだろう。むしろそれを極度に単純化してしまうと、さまざまなマインド的問題が生じるのではないかとも思えてくる。

なんにせよ、提示されたノウハウに真面目に従う人は──特に自らで苦しみを呼ぶほどの真面目さを持つ人は──本書がそれをときほぐす手助けになるだろう。もちろん、紹介されている「リアル」なノウハウもきちんと役に立つのでお得である。

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