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『転生したらスライムだった件(1)』( 川上泰樹、伏瀬、みっつばー)

言わずとしれた人気作品である。で、もちろん人気の理由はちゃんとある。

とりあえず、一つ言えるのは、「タイトルから想像していたのと違った」、であろう。同じことは、『幼女戦記』とか『終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?』とか『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』とかにもあるわけだが、注目を引く代わりに食わず嫌い(読まず嫌い)が発生してしまうリスクも備えている。そんなこんなで、私もしばらくは忌避していたのだが、なんとなく手にとって、そのままはまった。

もちろん、タイトルに嘘偽りはない。主人公は転生して、スライムになった。昨今のRPGでは最弱モンスターである。その最弱モンスターが頑張って成り上がっていくと思うじゃん? でも、そうじゃないんだな〜、という展開である。れっきとしたチートもので、なんならデウス・エクス・マキナが内蔵されていると言ってもいい。

でも、面白い。面白いのだ。主人公にとって本質的なピンチはほとんどないのだが、それでもきちんと盛り上がる。シリアスとユーモアの緩急がうまいのかもしれないし、キャラクターが丁寧に描かれているせいかもしれないが、それだけではないだろう。

特に本作の前半は、育成系のノリがある。それも、アトリエシリーズ系ではなく、シムシティー系である。主人公リムルを頂点にした、一つの共同体が拡大していくその過程(と困難)に、成長物語を見ることができる。本書の魅力は、その辺りにもありそうだ。

むろんそれは主人公がチート的であってこそである。彼が盤石だからこそ、私たちは安心して共同体の行く末にドキドキできる。シムシティーで、市長の体調管理まで心配しなければならないなら、認知的に忙しすぎるだろう。

チートという土台があってこそなのだ。

転生したらスライムだった件(1) (シリウスコミックス)
漫画:川上泰樹, 原作:伏瀬 (著), キャラクター原案:みっつばー [講談社 2015]

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