『セルパブ戦略』は、「月くら」計画について書いた「月くら」計画の本、というメタな構造を持っています。
でもって、「月くら」計画は、実験のために本作りに何かしら新しい要素を加えるのでした。当然、『セルパブ戦略』でもそれまでの本作りでやってこなかったことにチャレンジしています。
今回は、それについて書いてみましょう。
圧倒的コラム
本作には、ものすごい数のコラムがついています。
Binder上で「▼」マークが付いているのがコラムがある箇所。数えてみたら、13個ありました。本文全体が25個ぐらいなので、半分程度についています。
私は、本文の論旨からややズレる「ちなみに話」をよく書くのですが、それらをすべてコラムに押し出しました。本文をシャープに尖らせながらも、話題の豊穣さを失わせない一つの工夫です。
ちなみに、これは『「超」整理法』から拝借したアイデアです。
この本にもたくさんのコラムが出てくるのですが、案外そのコラムの存在が『「超」整理法』の魅力を形作っているのではないかと思い、臆面もなく拝借させていただきました。ただし、リフロー型の電子書籍では、本文中にコラムを組み込むと読みづらくなりますし、また、文字の流れ方をコラムだけ変えるのも(本文は横書き、コラムは縦書き)ややこしくなるだけなので、ストレートにはパクっていません。
コラムは本文が終わってから始まるようにし、ボーダーを付けることでコラム感を出しつつも、alignとmarignの設定で「ここは本文ではありません」をできるだけシンプルにアピールできるようにしました。
このスタイルは、なかなかうまくいったと思いますので、今後の「月くら」計画の本でも採用されることはありそうです。
全体の構成
本書は、以下の四章から成り立っています。
・第一章 「月くら」計画ビギニング
「月くら」計画の概要をご紹介。
・第二章 「月くら」計画から学ぶ9つの教訓
「月くら」計画から得られた教訓を9つにまとめて提示。
・第三章 500人の読者理論
セルパブで食べていくにはどのくらいの規模が必要か。
・第四章 セルフパブリッシングの未来
黎明期を抜けたセルフパブリッシングはどうなっていくか。
この組み合わせ方も、これまでの本にはありませんでした。
中心となるのは第二章で、第一章はその前段階のお話。この二つは、「実践」がベースとなっています。第三章では、「こうなったらいいな」という目標の話で、第四章では「こうなるのではないか」という未来の話です。
これまでの本では、「実践」について書くなら実践だけ、というワンコンセプトの形になっていましたが、この本では少し位相の異なるお話が組み合わさっています。もちろん、通底しているのは一つのテーマです。つまり、「論文集」的な作り方、ということです。
実際、第一章と第二章は、月刊群雛に寄稿した原稿を膨らませたものですし、第三章はHonkureに書いた記事を手直ししたものです。第四章は、私のEvernoteのアイデアメモにあった「チーム・ギルド・アライアンス」という一行だけの書き込みから書き下ろしたものです。つまり、「再構成・リライト・書き下ろし」が混ざり合った本なのです。
でもって、それを混ぜ合わせるときに、それぞれの話がきちんとつながるように__もっと言えば、ネットワークを形成するように__気を配っています。完成したものを眺めてみると、はじめから準備してあったかのような、そんな気すらするくらいにスムーズに流れています(※)。
※著者バイアスはあるでしょう。
全体を見渡したとき、中心となるのは第二章であろうことは間違いなかったので、第一章は導入的に軽く、第二章はがっつりと(ただし、コラムでリズムを)、第三章は少し押さえて、第四章はふたたび軽くと、読み方に緩急がつくようにも配慮してあります。
ちなみに、その配慮は、原稿を書いているときはまったく考えていませんでした。1st Draftができて、読みながら全体の構成を整えているうちに「そうしたほうがいいかな」と思い立って、手を入れたものです。その段階で、文章の配置を大幅に変えたり、あるいは泣く泣く馬謖を斬ったこともあります。盆栽を育てるようなものですね。
写真を使った表紙
今回の表紙は、「ぱくたそ」さんから写真を拝借し、それを加工して作りました。これも初めての試みです。ちょっとうまくできたのではないかと、個人的には思っています(※)。
※著者バイアスはあるでしょう。
ぱくたそさんは、使いやすい画像が多いので、今後も使わせていただこうと思います。ありがとうございます。
さいごに
というわけで、執筆中に考えていたことで、これまでにやってこなかったことをいくつか紹介してきました。
このように次々に新しいチャレンジを行い、本作りの引き出しを増やしていくことも「月くら」計画の一つの目標ではあります。
では、では。