いろいろな終わり方があっただろうが、安心でき心温まるエンディングだった。
さて、リライフとは、もう一度人生をやり直すという意味だが、いわゆるタイムリープものではない。体が高校生に戻る特殊な薬によって、挫折した社会人が青春時代にもう一度挑戦する。つまり、社会復帰のための「社会人訓練」として二度目の高校生活を送る。それがリライフ実験だ。
それだけであればいわゆるチートもの(社会経験や知識を活かす)か、あるいはやっぱりダメでしたものになるのだが、本作の醍醐味はやはり二人のリライフ被験者による恋愛である。このもどかしさは、是非とも本作を読んで体験して欲しい。心は大人なので、「高校生には手を出せない」と躊躇しながらも互いに惹かれていく気持ち。そして、それをうまく表現できない日代さん。うん、実に良い。
私たちは、当たり前のように人生において挫折するし、タイミングが悪ければそこから立ち直るのが難しいこともある。しかし、リライフすれば、また違った可能性を、つまりは世界の見方を手にできるかもしれない。今とは異なる、しかしつながった自分が、新たに世界と関係性を結び直すとき、今の私もまたこれまでとは異なる形で世界と結びつくことができる。
言うまでもなく、一つひとつの読書もまた、リライフなのである。
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