気になること、というほどでないのだが、やっぱり気になっていること。
これはとある巨大ネット販売サイトのページなのだが、旧版の『発想法』と新版の『発想法』のレビューが綺麗に分裂している。これなんかはかわいい方で、映画作品であれば、もっと大きな分裂がある。
もしカスタマーによるレビューが、商品購入時の参考情報として役立つと仮定するならば、上記のようなレビュー泣き別れ状態は由々しき事態と言える。そういえば、この仮定は何かで実証されているのだろうか。まあ、いい。
もちろん、商品としての旧版の『発想法』と新版の『発想法』は違うプロダクトである。誤字脱字が改まっているかも知れないし、追加のコンテンツが少々はあるかもしれない。DVDとブルーレイも商品としては別物だ。
しかし、私たちの頭の中に形成される概念としては、それらは同一と言ってよいだろう。少なくとも、ブルーレイを観て「面白かった」という感想が、DVDになって著しく変わるとは思えない。「映画館では大迫力で楽しめたが、DVDでは」みたいなメディアの違いは当然あり得るが、DVDとブルーレイの差異はそれほど大きいものではないだろう。また、コンテンツの評価として見た場合の、新版と旧版も(大改訂が行われていない限りにおいて)、同様だ。
そもそも、この巨大ネット販売サイトは、ある本の「紙版」と「Kindle版」を同一系統のページで管理している。ページ自体は別物なのだが、相互リンクが貼られているので、ユーザーの動線は確立されている。だったら、新版と旧版でも同じことをすればいい。そうすれば、レビューは分散しない。あるいは、これは出版社側の事情なのかもしれない。
ともかく、だ。
コンテンツ商品というものを──シニフィアン(signifiant)とシニフィエ(signifié)──のように、製品とコンテンツと分けて捉えた場合、カスタマーレビューとして必要なのは、コンテンツに関するレビューなハズである。しかし、ネット販売サイトは製品の販売をしている。その不具合に関するレビューも当然掲載されなければならないであろう。であれば、やはりコンテンツに関するレビューは切り離して管理した方がいい。それがGoodreadsの役割であるように思われる。
しかし日本にはGoodreadsほどの存在感を持つサイトはおそらく存在しない。蔵書管理ツール・読書管理ツールはたくさんあり、それらでユーザーが分散している。最近では著名人の書評を集めたALL REVIEWSというサイトも登場しているが、結局それもカスタマーレビューとは分離している。
それら全体を統合するような読書・書籍情報サイトが登場すれば、結構すごいことになるのではないか、なんてことを考えながら、私もこのサイトで分離ぎみに本の感想を送り続けている、というわけである。やはり問題は、インセンティブの設計なのであろう。