フルのタイトルは『ソードアート・オンライン オルタナティブ クローバーズ・リグレット』ということで、『ソードアート・オンライン』のスピンオフ作品である。
作者の渡瀬草一郎氏は、『輪環の魔導師』シリーズなど幻想的な作品を手がける作家で、本作においてもその手腕はいかんなく発揮されている。ファンタジー風味の強かったメインシリーズとは違い、本作では和風なMMORPG(当然フルダイブである)が舞台となっており、同じ世界観を共有しながらも受ける印象はずいぶんと異なる。また、作品が持つ影も川原礫とは違う色合いである。構成も絶妙だ。こういう作品がスピンオフで出てくること自体が、すばらしいと思う。
ちなみに、この「オルタナティブ」には「ガンゲイル・オンライン」版もあり、そちらは『キノの旅』で著名な時雨沢恵一氏が手がけている。こういうのを「人気作品から搾り取れるだけ搾り取る」ような構図で見る向きもあるだろうが、実際のところこれは『ソードアート・オンライン』に登場する「ザ・シード」の実体を持つメタファーでもあるのだろう。
このように一つの世界観をベースに、多数の著者がそこに参加していく構図は、ある意味で「二次創作」の構図をそのまま商業出版に取り込んだようにも思える。どちらにせよ、作品を楽しむ読者としては嬉しい限りだ。
渡瀬 草一郎 イラスト:ぎん太 [KADOKAWA 2016]
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