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ドラマ「民王」

念願の総理の座を手に入れた政治家が、自分の息子と入れ替わるドタバタ・政治コメディ。

ギャグな部分は徹底的にギャグだし、しかもシュールさが時折顔を覗かせる。TRICK的と言えば伝わるだろうか。しかし、政治についてはダイレクトに語られる。そのバランスが、本作の魅力だろう。

仕掛けとしては「入れ替わり」なのだが、そのよくある設定を使って、政治の現場に民衆の声をダイレクトに届けたらどうなるのか、という思考実験が繰り広げられる。

逆に言えば、政治家になり政治の現場に入るとき、その人間はそのためにさまざまな対価を支払い、さまざまなしがらみに縛られる。そういうゲームを強いられる。そのゲームのプレイに長ければ長けるほど、一般的な生活の感覚からは遠ざかってしまう。それは、選挙という政治の仕組みがある以上、一定量は避けられないのかもしれない。だからこそ、その選挙という仕組みを迂回することで、政治の世界に、しかも(一応は)最終決定権のある総理の椅子に、その辺の大学生を座らせてみる。「声」をダイレクトに載せてみる。そういう実験だ。

一方で、総理なんて(あるいは政治家なんて)誰であっても変わらないというシニカルな視点がありつつも、ある種の強い思いが、国を(というよりも、その政治に参加する人々を)変えられるという希望もまた語られている。

希望しか語れない人間は政治家としては力不足だ。しかし、希望すら語れない人間は、政治家にふさわしいのだろうか。もちろん、政治家は人々を導く存在ではないのかもしれない。しかし、現状をただ肯定するだけならば、その辺のロボットにでも椅子に座らせておけばよいだろう。

民王 DVD BOX
原作:池井戸潤 脚本:西荻弓絵 監督:木村ひさし 本橋圭太 山本大輔 [東宝 テレビ朝日 2015]

民王
池井戸潤 [2013 文藝春秋]

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