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映画『プロメア』

きわめて熱い作品である。

今石洋之&中島かずきコンビの作品ということで、その熱さは予見されてはいたが、実際の熱量は予想をはるかに超えるものだった。なにせ2時間ほどの映画である。そこに本来なら1クール分くらい使うであろうエネルギーが注ぎ込まれている。熱くないわけがない。

もちろん、楽しみ方はいろいろあるだろう。サブキャラまわりの声優陣は、『キルラキル』を彷彿とさせるし、キャラクタ・イメージやロボットは、『グレンラガン』を彷彿とさせる。それだけで、なんとなく楽しい気持ちになってくる。

音楽は澤野弘之の世界観が全開になっていて、ターっと来て、そこから一気にダーっと広がっていくあの心地よさに溢れている。ビジュアルも派手でありながら、うるさいところがない。明らかに悪役っぽい堺雅人は、ほとんど狂人の域に達していて、感心を通り越して若干ビビってしまうくらいだ。あと、あやねるはかわいい。

演出も実に巧妙で、炎(炎上)ということがテーマであり、氷化が鎮圧の手段となっていて、血なまぐさいシーンがほとんどない。そこにポリゴン風味の描写が重なり、現実感が妙に遊離している。これは「リアリティーがない」という否定的な意味ではなく、何かのレイヤーが重ねられているような、そんな感覚になってくるのだ。

もちろん、この作品の熱さは、そんなレイヤーなどをぶち抜いて観客の心に突き刺さるだろう。そこが単純にすごい。

もう一つ巧妙だと感じるのは、「悪」なるものの扱いである。個人の心性に原因を求めるのではなく、まったく別のものにスライドさせて作品を終えている。そのような形を取らない限り、この作品の幕引きに了解は得られなかっただろう。個人の心性に原因を求める限り、調和というのはやってこないのである。

燃えるような情熱と、ネットで盛んに起こる炎上。そして、火消しの情熱。

この作品を見終えたあと、私たちが世間の炎上に感じるのは、「よく燃えているな」というのではなく、むしろ「不完全燃焼なんだな」という気持ちであろう。

そのような思いの転換が何をもたらすのかは、今のところわからない。

▼:「プロメア」オリジナルサウンドトラック
「プロメア」オリジナルサウンドトラック

監督:今石洋之,脚本:中島かずき[TRIGGER 2019]

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