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『オーバーロード(1) 』(深山フギン、丸山くがね、大塩哲史)

気がついたら、ゲームの中の世界にいた、という今ではテンプレ的すぎてあまり使われなくなっている(ある意味で)王道的な異世界転生ものである。

異世界転生ものでは、現実と同じ姿で転生するもの、幼児として生まれ変わるもの、スライムなどまったく異なった形で誕生するものといくつかのパターンがあるが、本作は異形系となっている。不死の王、つまりアンデットとして異世界にいく。

アンデットはそもそも死んでいるわけだから、「生まれ変わり」と言っていいのかどうか微妙に困るところだが、ともかく本作は「ゲーム」と非常によく似た世界において転生する、というところから話は始まる。でもって、ゲームの世界でかなりハードにやりこんでいた主人公は、転生後の世界でも強力無比な存在である。一国くらいは児戯として滅ぼせるくらいには。

その意味で本作はチートものなのだが、むしろ特徴的なのは、視点の多様さであろう。少なくとも本作は、主人公の「俺ツエー」に始終してはいない。むしろ、主人公は支配者として、部下たちの成長を見守る立ち位置にあり(その立ち位置は、共同体を育成する『転生したらスライムだった件』ともまた違ったものである)、一歩引いたようなところがある。

当然、その分彼らが──つまり、部下たちが──一歩前に出てくることになり、それが群像劇的な面白さを盛り上げてくれる。

こうしたことを考えても、テンプレ上等チート上等ではあるのだが、それだけでは物語の奥行きは狭くなってしまうことはわかる。テンプレの上に何を築けるのか、あるいはテンプレをどう料理するのか。その辺が、料理人の腕の見せ所ではあろう。

本作は実に良い料理がなされている。原作もアニメも非常に面白い。

オーバーロード(1) (角川コミックス・エース)
原作:丸山くがね,漫画:深山フギン,漫画版脚本:大塩哲史,キャラクター原案:so-bin [KADOKAWA/角川書店 2015]

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