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アニメ『龍の歯医者』

現在Amazonプライムビデオで視聴できる。監督は鶴巻和哉、原作・脚本は舞城王太郎、制作統括・音響監督は庵野秀明とそうそうたるメンバーだ。それだけでも注目に値するが、それだけではない。なんと言っても、山寺宏一と林原めぐみである。エヴァ、カーボーイビバップと、その世代真っ盛りだった私には直球の配役ではあるが、最近の『昭和元禄落語心中』でも、たいへん素晴らしい演技を見せてくれている二人である。これはもう、見るしかないだろう。

映像・音響の美しさと、常識を飛び越えた世界観のマッチングも素晴らしい。スタジオカラーらしい作品と言えるだろう。
※キャスト情報等はこちら→NHKアニメワールド 龍の歯医者

さて、内容である。「龍の歯医者」とは思わせぶりなタイトルだが、そのままストレートに龍の歯医者が登場する。龍のデンタルケアをサポートする仕事に従事する人々。それが龍の歯医者である。では、龍とは何なのか。なぜその歯を人がメンテナンスするのか。それについては、具体的には語られない。部分的な説明と、「たぶんこうであろう」という視聴者の想像力が交差する地点にその答えはある。

もちろん龍もその歯もメタファーではあるのだが、それでいて、現代社会を生きる人間であれば、実感的な痛みを伴うメタファーでもある。いかに偉大な龍でも、歯が痛ければどうしようもない。その肉体的な(私たちがよく知る)現実が、たとえそのメタファーが何を示そうとも(何も示していなくても)本作を成立させている。

ちなみに、主人公(的ポジション)である野ノ子は清水富美加が演じていて、これが見事にはまっている。明るく、強く、優しさを持った彼女がいなければ、この物語はきっと絶望に包まれていただろう。死すべき運命に対峙するとは、結局のところ、美味しいご飯を食べ、自分の役割を精一杯こなすことなのだと感じる。もちろん、食事の後には、歯を磨くことだ。

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