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『プロフェッショナルの条件』(P・F・ドラッカー)

副題は「いかに成果をあげ、成長するか」。原題を生きる知識労働者は必読の一冊と言っていいだろう。

まず基本的な理解として、「知識労働者が、雇用主となる組織よりも長生きする」時代になっている、という点がある。日本はそれでも特異的な例外でああるが、それでも大企業と見なされていた会社が傾いてる事例は珍しくない。そうなると、一つの会社にべったり(=ある企業文化への過剰適応)で生き残るという戦略はいささか厳しさを増してくる。

そうなれば、会社を替わっても生き延びられるスキルが必要だし、それ以上に新しい組織に適応する姿勢も必要になってくる。本書では、そのための指針が開示されている。目次は以下の通り。

Part1 いま世界に何が起こっているか
 第1章 ポスト資本主義社会への転換
 第2章 新しい社会の主役は誰か

Part2 働くことの意味が変わった
 第1章 生産性をいかにして高めるか
 第2章 なぜ成果があがらないのか
 第3章 貢献を重視する

Part3 自らをマネジメントする
 第1章 私の人生を変えた七つの経験
 第2章 自らの強みを知る
 第3章 時間を管理する
 第4章 もっとも重要なことに集中せよ

Part4  意思決定のための基礎知識
 第1章 意思決定の秘訣
 第2章 優れたコミュニケーションとは何か
 第3章 情報と組織
 第4章 仕事としてのリーダーシップ
 第5章 人の強みを生かす
 第6章 イノベーションの原理と方法

Part5 自己実現への挑戦
 第1章 人生をマネジメントする
 第2章“教育ある人間”が社会をつくる
 第3章 何によって憶えられたいか

大きく5つのパートで構成される。

パート1とパート2は前提の確認で、マネジメントと知識社会における知識労働者の位置づけが確認される。セルフマネジメントにおいて重要なのは、続くパート3で、ここは熟読されて良いだろう。ドラッカーの過去を振り返りながら彼が持つ7つの指針が開示され、さらに重要なポイントが3つの章で深掘りされる。

「自らの強みを知る」「時間を管理する」「もっとも重要なことに集中せよ」

どれもこれも大切で、組織に属していない私のようなフリーランスの知識労働者でも__というかむしろより一層__意識しておく必要がある。

パート4は、意思決定の話で、マネジメントの話でもある。もちろん、ひとりの知識労働者は自分の仕事の(あるいは人生の)マネージャーでもあるので、この知識も有用だ。

最後のパート5では、仕事ではなくより長いスパンとしての人生、企業ではなくより大きい視野としての社会での考察が加えられている。「何によって憶えられたいか」という有名な問いは、『7つの習慣』におけるミッション・ステートメントに通じるものがあるだろう。

もちろん、本書の内容はプロフェッショナルである知識労働者に向けての話で、情報化社会における市民ほどには敷衍した内容ではない。市民にここまで求められると困ってしまう。ただ、知識労働者であり続けたいのなら、本書の内容は十分に吟味され、いくらかは実行に移されることだ。ドラッカーの通りにはできなくても、彼が何を欲していたのか、なぜそれを重要視していたのかはわかるだろう。

プロフェッショナルの条件 はじめて読むドラッカー (自己実現編)
P・F・ドラッカー, 上田 惇生訳 [ダイヤモンド社 2000]

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