新しく創刊されたSF文芸雑誌。セルフパブリッシングで活動中の作家が原稿を寄せている。
・オラクル (大滝瓶太)
・詐欺師の鍵 (山田佳江)
・シャノン・ドライバー (米田淳一)
・ロール・オーバー・ベンヤミン(ろす)
・痛みの見せる夢 (淡波亮作)
・プラトーン・スタンダード(波野發作)
・アルミ缶のうえに (伊藤なむあひ)
の全7作品 。個性的な作家が集まっているというか、「雑誌としてのテイストを統一しよう」という気持ちがどこからも感じらないのが素晴らしい。いかにもなSFがあり、いっけんそうとはわからないSFもある。そうした距離感のさまざまなSFがパッケージされているというのが、雑誌の「雑」たる由縁だろう。
むしろ本誌はSF雑誌として楽しむというよりも、それぞれの作家の個性を味わうのが良さそうだ。各作品の論評は控えるが、山田佳江さんの「詐欺師の鍵」は、とにかく続きが気になって仕方がないし、ろすさんの「ロール・オーバー・ベンヤミン」は、軽妙な文体でありながら、それでも心に響くものがある。こういった文章が、「この雑誌があったからこそ生まれた」のだとしたら、実に素晴らしいことであり、それがまさに「場」としての雑誌の役割の一つでもあろう。そこには商業かそうではないかの線引きはまったく関係しない。
おそらく今後は、似たような形態の「雑誌」が次々と生まれてくるだろう。あるいは、そうなることを願っている。とりあえずは、オルタナのvol.2の発売を期待である。
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