中世ファンタジーを思わせるタイトルだが、舞台はきちんと現代日本である。
「第1部 顕れるイデア編」の途中までは、リアリズムで物語は進んでいく。プロローグはいささか示唆的ではあるものの、それを除けば、意外なほど静かにリアリズムは進行していく。もちろん、それで終わるはずもない。イデアが登場し、メタファーが顔を覗かせる。騎士団長が登場し、顔ながが立ち現れる。主人公は、否応なしにそこに引き込まれいく。
全体を通して、これまでの村上作品のモチーフが随所に見られる。いかにもジェイ・ギャッツビーな人物も登場する。そういう意味では、村上色溢れた作品とは言えるだろう。二重メタファーには思わず笑ってしまったくらいである。でも、それは笑うようなことではないのかもしれない。
『1Q84』のように、複雑な構造にはなっていない。少なくとも、一見すれば(どれほど奇妙であっても)まっすぐな筋書きである。英雄の物語だ。でも、その細部は緻密で複雑である。どうにも腑に落ちない要素も含まれている。ひと言で、「こうです」と差し出せるようなものではない。
さて、いったいどういうことなのだろうか。
ひとまず、第2部で物語は終わりを迎えた。あるいは、そのように思える。しかし、それで環は閉じたのだろうか。どうにもそういう感じではなさそうだ。続きがあるのだろう。
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