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『チョコレートの天使』(赤井五郎)

正直なところ、冒頭は若干読みにくい。というよりも、世界観が掴みづらいのだ。タイトルからも中身はイメージしにくいし、物語の構造自体が捉まえやすさを拒絶している。

でも、その門をなんとかくぐり抜ければ、すばらしい世界が待っている。

作品自体はファンタジーであり、少々のミステリー的要素もある。といっても謎解きを楽しむような本ではない。むしろ、著者が描き出す世界にどっぷり浸かる本であり、それを支えるためのキリっとした想像力もある。

なにやら一つの物語が始まったかと思えば、別の物語がほのめかされ、また別の物語がちらつき始める。全体像はわからないままに、主人公たちの時間だけが進んでいく。そして、それすらも怪しくなる。そうなると、もう読者たる私は次の文を求めるしかない。結局、一気に読み上げてしまった。

構想的・構造的に突っ込む余地はあるかもしれないが、想像力に満ちた世界構築と引きずり込むストーリーテリングの前では些細なことである。

チョコレートの天使
赤井五郎 [赤井五郎 2014]

2 thoughts on “『チョコレートの天使』(赤井五郎)

  1. 丁寧なご感想ありがとうございます!

    長すぎる&読みにくい話であることは分かっていたのですが、もう作者の力不足で、こういう形にしかできなかったという感じです。
    タイトルもバレンタインデーかよ、という感じですが、あのオチへたどり着くためのお話なので、他の選択肢はありませんでした。一人で書いているためにそれを止める人間もいないという……

    また精進して楽しんでいただけるようなものを書きたいと思います!
    ありがとうございました!

    • >赤井五郎さん

      読みにくいことはありませんし、長さで言えばもっと長くても耐えられる物語の強度があると思います。タイトルに関しては、『魔女と天使のチョコレート』というのがありかなと思いました。

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