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『ショート・ピース(1)』(小林有吾)

映画である。映画作りである。

内容紹介には「映画撮影譚」とある。まあ、それはそうかもしれない。でもまあ、これはドラマである。芸術というものと、人間がいかに関わるかについての人間ドラマである。それはつまり、人がいかに生きるか、についての話だ。

人類は多かれ少なかれ、芸術と寄り添って歩いてきた。はるかはるか昔ですら、壁画があったのだ。音楽もきっとあっただろう。火を囲んで披露される物語は、人々の心をその炎以上に温めたかもしれない。

人が生きる上で、そうしたもの、つまり、現実からは遊離しながらも、薄い膜のようにぴたっとその上に寄り添うものを避けて通ることはできないし、避けて通ってしまうと、だいたいややこしいことになる。人生の中盤あたりから、その膜がないことのリスクが増えていく。それはきっと、魂と向き合うために必要な膜なのだ。

さて、ショートピースというと、スモーカーの人はショッピを思い出すかもしれないが、あるいは仙台短篇映画祭のことなのかもしれない。とは言え、素直に解釈すれば「小さな破片」だろう。

映画は、ワンシーンワンシーンの積み重ねで生まれる。映画を作る人たちも、一人ひとり集い、また己の役職をまっとうする。そうして、全体を組み上げていく。しかしそれもまた、人生のひとときを彩るに過ぎない。すべてはショートピースなのである。

私はたぶんこの作品の紹介について回り道をしすぎていると思う。でも、簡単に紹介したくない作品なのだ。それだけはわかっていただきたい。

ショート・ピース(1) (ビッグコミックス)
小林有吾 [小学館 2017]

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