文芸雑誌。半分はグレイス・ペイリーの特集で、短篇が5本とエッセイ、それにインタビューが掲載されている。それらすべてが村上春樹訳である。
また春樹さんへのインタビュー(聞き手は柴田元幸さん)もあって、タイトルは「短篇小説のつくり方」。これはもう読むしかない。といっても、短篇小説ライティングのノウハウが詰め込まれているわけではないので、その点にはご注意を。
春樹さんは、さすがに小説家だけあって、ストーリーみたいなものは即興的にさらさらと書き出せるようだが、それができるようになったのが30歳を過ぎてから、という話が面白かった。ニューロンのネットワークが、「お話作り」にシフトしていった結果なのだろう。
あと、こんな話もある。
(前略)アメリカの「創作科系」の短篇小説には僕もちょくちょく辟易させられるけど、日本の文芸誌的短篇小説にも少なからず辟易する。いかにも「それっぽい」というか。ただアメリカは多民族国家だから、どこかでそういう体制を突き崩すものが出てくる。でも日本の出版社は結局東京に集まっていて、その狭い中でやりとりしているから、やっぱり煮詰まってくるというか、定型的に似通ってくるところがありますよね。容れ物自体にそういう色が着いてしまっている。そしてそういう容れ物の中にはうまく収まりきらないタイプの作品もあるはずです。
だからそう、セルフパブリッシングなのだ。ある種の容れ物にそぐわないからといって、その作品が劣るとは言えない。現在では、レーベルみたいなものも増えてきていて、多様性も増しているようには感じられるが、やはりどこかで「似通った」部分は出てきてしまうだろう。
これからの個人作家たちが、「んなこた、知らねーよ」的気概で、容れ物から疎外されてしまうような、それでいて新しい容れ物を作り出してしまうような作品を生み出してくれたら小説の文化も豊かになっていくだろう。
ちなみに、このインタビューの後には「超短篇」が13本収められている。どれもこれも1ページだけの短篇で、キリッと冷えたマティーニみたいに切れ味がある。僕はそういうショートショートが大好きだ。
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