やはりというかなんというか力強い作品。
前巻から少しずつエンディングに向けて話が動いている。「最大の困難」の登場と共に、「これまでの登場人物」が主人公たちに協力し、おそらくは大きな喪失を経て、物語は大団円へと向かっていくのだろう。
これまで辿ってきた物語のエピソードたちが糸となり、それが絡み合って大きな模様を描いていたことに気がつかされる。簡単に言えば伏線の総回収というわけだ。構造としては単純かもしれないが、やっぱり人の心はそこに感動を覚えるし、これほど長い物語を紡ぐことそのものが著者の力量である。むやみやたらに長引かせているような印象もなかった。少しずつ音が重なっていくように、するすると流されながらも大きな渦に飲み込まれていく。そんな心地よい感覚を与えてくれるシリーズである。
言うまでもなく、ソードアート・オンラインは電撃文庫の中でも頭一つ抜けている。そしてこの作品はアクセル・ワールドと共に読むことで一重も二重も面白さが増す構造になっている。その辺りの「川原礫」論みたいなものは、両シリーズの本編がめでたく終了した辺りでまた書いてみたい。
「これは、ゲームであっても
遊びではない」
がこのシリーズの扉を常に飾ってきたが、本作はそれをモジれば、
「これは、ライトノベルであっても
ただの娯楽作品ではない」
となる。そういう力を持った作品だ。
川原礫[KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2016]
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