最高である。あらすじを書くと「理系すぎる大学生が、年上のお姉さんに恋する物語」となるが、何をどう考えてもこんなお話ではない。むしろロックバンド風の「イカれた理系野郎どもを紹介するぜ〜!」の方が近いだろう。
当初は「理科的面白実験」が中心だったように思えるが、少しずつ「理系」のお話へと視野は広がっていく。科学史に名前を連ねる有名人のプライベートなお話や、科学への貢献度は高くてもあまり名前が知られていない学者の話が、エンターテイメントな味付けでトッピングされるのは、読んでいて痛快である。
科学の話を身近に、というとたとえばトーマス・トウェイツの『ゼロからトースターを作ってみた結果』があるし、少しネジを締めるとマーク・ミーオドヴニクの『人類を変えた素晴らしき10の材料』もある。一つのトピックを掘り下げて、ストーリー仕立てで物語るなら、サイモン・シンのお家芸だ。どれもこれも面白い。
科学の話は__特に最近の物理の話は__あまりにも私たちの日常的な感覚からは遠い。でも、そうしたものは何かしらの形で私たちの日常と関わりがあると知ると俄然興味が湧いてくる。少なくとも、親近感は覚える。
科学にも歴史があり、科学者にも歴史がある。ウィキペディアの科学者のページを読み漁るのも楽しいが、こうして漫画で楽しませてくれるのも最高である。
付け加えて言うなら、市民社会で主権を持つ市民が、科学についての基礎的な知識を持っていることはむしろ大切なことだろう。施策、つまり予算の分配を決める一票を持っているのはまぎれもなく私たちなのだから。
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