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アニメ『ハイスクール・フリート』

完全に、二匹目のドジョウ狙いだと思っていた。軽んじていたわけではないが、甘くは見ていただろう。

女子高校生のクラスが、軍艦を運用する。そんな奇抜な設定は、戦車1台であっても厳しいわけだが、軍艦ならなおさらである。でも、そんなことは全然気にならない。ところどころに入ってくる微妙なリアリティと、考証したくなる気持ちをあっけらかんと吹き飛ばしてくれるような非現実な設定が絶妙なバランスで混ざり合っている。

言ってみれば、『ガールズ&パンツァー』と『蒼き鋼のアルペジオ』を足して2で割って、禍々しさパウダーを少々振りかけたような作品である。でもまあ、そういうカテゴライズにあまり意味は無いだろう。


「日常ほのぼの」系なのかな、という印象を漂わせてスタートした第一回では、もうすでに不穏な空気があった。第二回、第三回と緊張感が高まっていく。

だいたい海ものなのに、オープニングが青い海ではなく、夕暮れの、つまり黄昏の風景が多く使われていたことは示唆的だろう。始まりよりも、終わりが匂わされているのだ。

ただし、一つの終わりは、次の始まりであることは言うまでもない。


本作は主人公が二人いる。晴風艦長の岬明乃と、副長の宗谷ましろだ。ちなみに、艦長の幼なじみでもあり、武蔵の艦長でもある知名もえかは、キャストが雨宮天ということでもっと主要メンバーになるかと思いきや、存在感があったのは終盤のみである。基本的には、晴風の艦長と副長の二人が主人公と考えておいてよいだろう。

構造的に見れば、艦長である岬だけが主人公であり、副長である宗谷ましろはその存在を一度否認した上で、改めて受容するだけのキャラクターのようにも思える(ドラゴンボールで言うところのピッコロやベジータ)。しかし、彼女は彼女でしっかり主人公なのだ。むしろ、本作は彼女の物語であったとすら言えるかもしれない。

なぜなら、これは「正義」の物語(命をかけて、仲間を守る)であると共に、継承の物語でもあるからだ。それは、最終話、宗谷真雪が「私の生徒たちが……」とつぶやいていたことからも明らかだ。

本作は、志を受け継ぐものたちの物語でもある。だからこそ、両方が主人公だと言えるのだ。


結局、本作では陽炎型航洋直接教育艦「晴風」の乗組員は誰も死ななかった。

おかげで中盤に中だるみが発生したかのようにも思えるが(船の上で起こる出来事には限りがある)、最終話の一番最後のシーンのためには、その状況は絶対に必要だったのだろう。

その判断は正しかったように思う。

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