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『アウトライナー実践入門』(Tak.)

非常にモダンな(現代的な)、知的生産の技術書。

アウトライナーというツールの定義(あるいは再定義)から始まり、アウトライン・プロセッシングの技法や、「シェイク」の考え方と実践が1冊にまとまっている。

アウトライナーを使った知的生産や、アウトライン・プロセッシングの意義については、奥出氏の『思考のエンジン』でも語られているいるが、正直に言ってそれはわかりやすいものではないし、初心者向けでもない。代わりに、本書がその役割をしっかりと引き受けている。

重要なのは次の二点だろう。

一点目は、アウトライナーは「アウトララインを作り、それに沿って文章を書くためのツール、ではない」ということ。では、アウトライナーとは何なのかと言えば、著者は「アウトラインを利用して〈文章を書き、考える〉ためのソフト」だと定義している。そう、アウトラインは「付き従うもの」ではなく、「利用する」ものなのだ。この思考の転換は、アウトライナーの利用において大きな意義を持つ。

二点目は、本書で提示される「シェイク」という概念だ。これは著者が__おそらくは長いアウトライナー体験によって__発掘した概念であろう。物事の進め方には、トップダウンとボトムアップが想定されるが、その二つを両義的に含んだ「シェイク」という概念が、両方の良さを備えた現実的なアプローチを私たちに与えてくれる。

そしてこの「シェイク」という考え方は、アウトライナーの利用に留まるものではない。行って帰ってまた行ってという、両端の行き来を繰り返すプロセスは、物事が単純に白黒で割り切られてしまう世界において、思考の多様性や柔軟性をキープしながらも、そこに強度を与えるために必要なものである。

なんだか難しい話になってしまったが、本書はタイトル通り「実践入門」なので、読みやすく、わかりやすい内容になっている。この分野に興味があるならば、読んでおいて損はない。

アウトライナー実践入門 ~「書く・考える・生活する」創造的アウトライン・プロセッシングの技術~
Tak. [技術評論社 2016]

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