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『暗殺教室 21』(松井優征)

アニメ版も最終話を迎え、コミックの最終巻も発売された。

ストーリーはどちらも同じであり、最終巻で著者が述べているように、本作は漫画版・アニメ版を含めて一つの作品と言っていいだろう。

まず、いきなりオチについてであるが、ひねりのないまっすぐな終わり方だった。そのことに安心した。

とは言え、20巻であれほどの盛り上がりを見せてくれたのだ。お話自体がどのようなオチになったとしても、この作品への納得感が揺らぐことはなかっただろう。それくらいの作品だった。歴代のジャンプ漫画でも屈指と言っていい。

今思い返しても、20巻はすごかった。コミックを読んでぼろぼろ泣き、内容を知っているはずなのにアニメ版でもうるうるが止められなかった。「想いが重なる」__そういう感触だ。殺せんせーが生徒を眺め、雪村先生がそれを眺める。潮田渚がその想いを引き継いでく。まさしく継承の物語である。

加えて、烏間先生が最後の最後で超生物のことを「殺せんせー」と呼ぶ。その言葉にどれほどの想いが込められていただろうか。ドラマとは、まさにそうした想いの時間的な流れと重なり合いを表現する作品なのだ。

最終巻は、まるでクラシック楽曲のように、ストーリーの冒頭で示されたテーマが反復され、読者の心に回収されていく。緻密に計算された物語だ。見事と言うほかない。

一番最初、本作のタイトルを耳にしたとき、「また学園バトルロワイアルものか」とがっかりしていた。その頃は、そうした話が流行っていたのだ。そのような作品は、安易に命のやりとりを行い、結果的に本当に大切なものから視線を逸らしていた。

本作はそれを真正面から受け止めている。今から振り返ってみれば「暗殺教室」という以上のタイトルはなかっただろう。本作は最初から最後まで、一点の狂いもなく「教育」がテーマだった。それは「自分の時間を使って、誰かを活かすこと」だ。それは究極的に言えば、生命の原理でもあるし、人が生きるということでもある。

かといって、それは安直な自己犠牲でもない。生きることがあって、活かすことができる。そして、活かしてもらうことは、相手を殺すことでもある。

そのようにして世代は受け継がれていく。

ともかくまあ、ギャグで骨太な作品だった。

暗殺教室 21 (ジャンプコミックスDIGITAL)
松井優征 [集英社 2016]

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