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『リーディング・ナイフ』(山田佳江)

ジーパンにTシャツのような着飾らない文体、自然でありながら頭に残るキャラクター、引きを切らさないストーリーテリング。一行目から、僕たちはこの世界に誘われてしまう。陳腐な言葉で申し訳ないが、上手い。

しかもただ読ませるだけではない。言葉にならない何かを身体に刻むような重さもある。

以下は内容紹介より。

亮太との結婚を控えた由香は、荷物の整理中に古いノートパソコンを見つける。学生時代に使っていたそのパソコンから、自分宛にテストメールを送ると、九年前の自分からEメールが来た。『九月十一日のアメリカ同時多発テロ事件以降、もう十回も二〇〇一年を繰り返している』とそのメールには記されていた。

リープものでありながら面白い設定をしていて、しかもそれがうまく構造化されている。巧妙な想像力だ。まさしくそれが作家のコアでもあるのだろう。

リーディング・ナイフ
山田佳江 [無計画書房 2013]

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