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『僕のジョバンニ(1)』(穂積)

音楽系漫画で、楽器はチェロである。

序盤の展開はわりと静かなものだ。楽器が得意だがしかし秀才タイプの少年と、まったく楽器を触ったことがないが嗅覚が(つまり耳とセンスが)優れた少年が出会う。二人は良き友達になり、やがてその関係は……、といったストーリーである。

本格的に面白くなるのは、二人が大人になってからだ。二人とも音楽家としての道を決め、異なる方向性に向かってその歩みを進めていく。当然、その二人の道は交わるのだが、それぞれに苦悩を持っている。そうした音楽への苦心は、どこか『BLUE GIANT』と重なる部分がある。部活系音楽とは違い、プロとして生きていく音楽家ならではの苦心だ。

あと、主人公の兄である手塚哲郎がいい味を出している。彼がいなければ、単なる二人の天才(ないしは天才と凡人)の対立で話が閉じてしまっていただろうが、そこがうまくバランスされている。

男性二人のライバル関係という点では、『青のオーケストラ』に通じるところもあるので、そちらが好みなら本作もきっと楽しめるだろう。

穂積 [小学館 2016]

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