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『ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミンXIV』(宇野朴人)

シリーズ最終巻。まずは、お疲れ様でしたと作者に声を掛けたい。

私が知ったのはアニメからだが、シリーズ自体は2012年頃から続いている。最近では、なんとなく続かないままに消滅してしまう作品も多い中で、この大作をしっかり書き上げてくれたことには感謝の気持ちが強い。

とにかく心躍る作品で、悲しい作品だった。7巻の衝撃もそうだし、本巻もそうだ。特にマシューとイクタのシーンは泣けた。長い物語だからこそ生まれる心の動きがあったように思う。途中SF的展開もあったが、全体で見れば話の整合性を合わせるようなものでしかなかった。本作はファンタジー世界に「科学」が侵入してくる話であり、その舞台設定として必要だったにすぎない。

全体を通してみれば、ヒューマニズムな作品だったと言えるだろう。脳天気なそれではなく、人の弱さと強さを見据えたヒューマニズムだ。

イクタ・ソロークは、いつでも何かに抗っていた。人を人あらざるものに堕してしまう潮流に逆らっていた。人間であることは、常なる安楽に浸されているものではなく、かといって常なる責め苦に苛まれているものでもない。それぞれの深淵の川音を聞きながら(ときに覗き込みながら)、その真ん中を何とか歩いていくものである。

本作がハッピーエンドと言えるのかは私にはわからない。しかし、シャミーユが見せる背中は、おそらくそう呼んでふさわしいものであろう。

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミンXIV (電撃文庫)
宇野朴人 イラスト:竜徹 [KADOKAWA /アスキー・メディアワークス 2018]

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